Blog | 2026年8月28日

神奈川県の最低賃金が10月1日から1,279円に(+54円)|川崎の小さな会社が9月中にやること

10月1日から、神奈川県の最低賃金は時間額1,279円になります。前年から54円、4.40%の引上げです。ニュースとしては一行ですが、小さなお店や会社にとっては「うちは何をいつまでにやればいいのか」がすべてだと思います。増える金額の試算、9月30日までの確認事項、9月中しか申請できない業務改善助成金、そして増えた分をどこで埋めるかを順番に整理しました。

神奈川県の最低賃金が10月1日から1,279円に(+54円)|川崎の小さな会社が9月中にやること

2026年8月27日、神奈川労働局が令和8年度の神奈川県最低賃金の改正決定を発表しました。10月1日から時間額1,279円。前年から54円、率にして4.40%の引上げです。

項目内容
改正後の時間額1,279円
引上げ額(対前年)54円(1,225円 → 1,279円)
引上げ率(対前年)4.40%
官報公示日令和8年8月31日
発効日令和8年10月1日
適用範囲神奈川県内の事業場で働くすべての労働者と、その使用者

出典:神奈川労働局「令和8年度『神奈川県最低賃金』を改正決定します」(令和8年8月27日発表)報道発表資料

ニュースとしては一行で終わる話です。ただ、川崎で小さなお店や会社をやっている方にとっては、「で、うちは何をいつまでにやればいいのか」がすべてだと思います。この記事では、10月1日までに必要な確認と、9月中しか使えない制度、そして人件費が上がる分をどこで埋めるかを、順番に整理します。

まず、うちはいくら増えるのか

閉店後の飲食店のカウンターで、女性店主が電卓と時給表を見比べながら人件費の増加額を計算している様子

「54円」と聞いてもピンと来ないので、時給1,225円の方を1,279円に引き上げた場合の増加額を出しておきます。

働き方1か月あたり1年あたり
パート1人(月80時間)+4,320円+51,840円
パート1人(月130時間=1日6時間・週5日)+7,020円+84,240円
パート5人(月130時間×5人)+35,100円+421,200円

ここで見落としがちなのが、次の2つです。

  • 社会保険料の会社負担も一緒に増えます。上の表は賃金だけの金額です。社会保険に加入している方の場合、会社負担分がおよそ15%上乗せされるとみておくと、5人で年間48万円前後の増加になります。
  • 時給が上の人との差が縮みます。いちばん低い人を1,279円に上げると、これまで1,290円だったベテランのパートさんとの差が11円になります。「私は10年やってるのに」という話は、必ず出ます。実際にはその上の層もいくらか調整することになるため、増加額は表の数字より大きくなるのが普通です。

つまり最低賃金の改定は、「いちばん安い時給を直す作業」ではなく「時給表そのものを引き直す作業」です。9月中に一度、全員の時給を紙に並べてみることをおすすめします。

9月中にやること、3つ

1. 時給表と就業規則を、9月30日までに確認する

発効日は10月1日です。10月1日以降に働いた時間から、1,279円が適用されます。給与の締め日が15日や20日の場合、10月をまたぐ月は「9月分の時給」と「10月分の時給」が混在するので、給与計算ソフトの設定を先に直しておくと後で慌てません。

あわせて確認しておきたいのが、「最低賃金の計算に入れてよい賃金」です。ここを勘違いしていて、実は下回っていた、というケースがあります。

  • 計算に入れないもの:通勤手当、家族手当、精皆勤手当、時間外・休日・深夜の割増賃金、賞与など臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
  • したがって「基本給1,240円+通勤手当」で1,279円を超えていても、最低賃金法上はアウトです

もう一点。業種によっては、地域別最低賃金とは別に「特定(産業別)最低賃金」が定められている場合があります。その場合は高い方の額が適用されます。自社が対象かどうか分からないときは、神奈川労働局労働基準部賃金室(045-211-7354)で確認できます。

2. 業務改善助成金は、申請が9月1日〜9月30日

相談窓口のテーブルで、小さな会社の経営者が相談員から書類の説明を受けている様子

今回の報道発表で、最低賃金の額と同じくらい大事なのがこちらです。令和8年度の業務改善助成金の申請期間は、令和8年9月1日から9月30日まで。1か月しかありません。

業務改善助成金は、社内でいちばん低い時給(事業場内最低賃金)を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資などを行った場合に、その費用の一部が助成される制度です。上限は最大600万円。

項目内容
申請期間令和8年9月1日〜9月30日(予算の範囲内のため、期間内でも早期終了の場合あり)
助成率事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4
助成上限額コース(50円/70円/90円)と引き上げる労働者数で決まる。最大600万円
主な要件中小企業・小規模事業者で、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であること
事業完了期限交付決定年度の1月31日
申請の単位労働者がいる事業所ごと。同一事業所は年度内1回まで

対象になる経費の例として、厚生労働省のリーフレットには「POSレジシステムの導入による在庫管理の短縮」「経営コンサルティングによる業務フローの見直し」「顧客管理情報のシステム化」が挙げられています。機械や設備だけでなく、業務の流れを整理する費用も対象になり得るということです。

注意点を3つだけ。

  • 交付決定の前に発注・購入したものは対象外です。「先に買って後から申請」はできません。順番が逆になるとゼロになります。
  • 賃金の引上げは、発効日の前日(9月30日)までに完了する必要があります。複数回に分けての引上げは認められません。対象になるのは、週の所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者です。
  • パソコン・スマホ・タブレットは、原則として対象外です。ただし、原材料費の高騰などで直近6か月平均の利益率が前年度より3%ポイント以上低下している「特例事業者」に該当する場合は、新規導入が認められることがあります(この場合、就業規則等に事業場内最低賃金が1,100円である旨を定める必要があります)。

自社が対象になるかどうかの最終判断は、必ず窓口で確認してください。業務改善助成金コールセンター(0120-366-440/平日9:00〜17:00)、または神奈川労働局雇用環境・均等部企画課(045-211-7357)です。あわせて神奈川働き方改革推進支援センター(0120-910-090/kanagawa@workstylereform.net)では、賃金引上げや助成金の活用について、労務管理の専門家が無料で相談に応じています。企業訪問にも対応しています。

3. 「減らせる時間」を、1つだけ決める

3つ目は制度の話ではなく、うちの仕事の話です。

時給が54円上がるということは、1時間あたりのコストが上がるということです。逆にいえば、これまで「まあ、やっておいて」で済ませていた作業の値段も、同じだけ上がります。月130時間のパートさんに、シフト表づくりや在庫の書き出し、問い合わせメールの返信で毎日30分使ってもらっていたとしたら、その30分の年間コストは今回の改定でおよそ3,500円分増えます。人数が増えれば、その分だけ増えます。

だから、値上げや人員削減の前に一度考えたいのが、「そもそもやらなくていい1時間」を探すことです。

私たちが川崎の事業者さんとご一緒するとき、最初に洗い出すのはだいたいこのあたりです。

  • 毎週つくるシフト表:希望をLINEで集めて、手で組み直している
  • 発注メモと在庫の書き出し:紙のメモを見ながら毎回ゼロから書いている
  • 問い合わせメール・予約確認の返信:ほぼ同じ内容を毎回打ち直している
  • 日報・報告書:伝えたいことは3行なのに、書式を整えるのに30分かかっている
  • 請求書・見積書の作成:過去のファイルを探すところから始まっている

どれも大がかりなシステムの話ではなく、無料で使える道具と、少しの手順の整理で短くできる部分があります。大事なのは、全部を一度に変えないことです。いちばん時間を食っている作業を1つだけ決めて、そこだけ短くする。それが1日30分でも、パート5人分の年間増加額の一部は自力で作れます。

最低賃金が上がること自体は、働く人にとって良いことです。問題は、その原資をどこから出すかだけです。値上げできる商売ならそれが正解ですし、できないなら、時間を作るしかありません。

この記事のまとめ

  • 神奈川県最低賃金は令和8年10月1日から時間額1,279円(+54円、4.40%増)。官報公示は8月31日
  • 県内の事業場で働くすべての労働者に適用。通勤手当・家族手当・精皆勤手当・割増賃金は最低賃金の計算に入れない
  • 業務改善助成金の申請は9月1日〜9月30日。賃金引上げは9月30日までに完了。交付決定前の発注は対象外
  • 無料相談は、神奈川働き方改革推進支援センター 0120-910-090/業務改善助成金コールセンター 0120-366-440
  • 増える人件費の一部は、「やらなくていい作業を1つ減らす」ことで自力で作れる

よくある質問

神奈川県の最低賃金1,279円は、いつから適用されますか?

令和8年10月1日からです。8月31日に官報公示され、10月1日が発効日になります。10月1日以降に働いた時間から新しい額が適用されます。

給与の締め日が10月1日をまたぐ場合、どう計算しますか?

締め日ではなく、実際に働いた日で分けます。9月30日までの労働時間は改正前の額、10月1日以降の労働時間は1,279円以上で計算します。締め日が15日や20日の会社は、10月分の給与計算で両方が混在するため、事前に給与計算の設定を確認しておくと安全です。

パート・アルバイト・学生アルバイトも対象になりますか?

対象です。神奈川県最低賃金は、神奈川県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。雇用形態や呼び方は関係ありません。

通勤手当を足せば1,279円を超えます。これで問題ありませんか?

問題があります。通勤手当、家族手当、精皆勤手当、時間外・休日・深夜の割増賃金、賞与など臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、最低賃金の計算には算入しません。これらを除いた金額で1,279円以上である必要があります。

業務改善助成金の申請期限はいつですか?

令和8年度は、令和8年9月1日から9月30日までです。ただし予算の範囲内での交付となるため、申請期間内であっても募集が終了する場合があります。あわせて、賃金の引上げは地域別最低賃金の発効日の前日(9月30日)までに完了する必要があります。

パソコンやシステムの導入も業務改善助成金の対象になりますか?

パソコン・スマホ・タブレット等の端末は、原則として助成対象外です。ただし、直近6か月平均の利益率が前年度と比べ3%ポイント以上低下しているなど「物価高騰等要件」に該当する特例事業者の場合は、新規導入が認められることがあります。一方で「顧客管理情報のシステム化」や「経営コンサルティングによる業務フロー見直し」は、対象経費の例として挙げられています。個別の可否は業務改善助成金コールセンター(0120-366-440)でご確認ください。

賃金引上げや助成金について、無料で相談できる窓口はありますか?

神奈川働き方改革推進支援センター(電話 0120-910-090/メール kanagawa@workstylereform.net)で、労務管理の専門家による無料相談を受けられます。電話・メールのほか、企業訪問やコンサルティングにも対応しています。最低賃金そのものについては、神奈川労働局労働基準部賃金室(045-211-7354)が窓口です。

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