プロローグ：『いいね』が怖い。フィルター越しの私と、開かないドア カーテンの隙間から差し込む六月の光が、部屋の埃をきらきらと照らし出している。でも、桜井日菜（さくらいひな）の世界は、光の届かないベッドの上にあった。手に持ったスマートフォンの画面だけが、彼女の唯一の窓であり、...

第1章：アップデートされない経営、アナログ・ワークフローの限界 JR南武線の武骨な銀色の車両が、高架線を滑るように走り去っていく。ホームに吐き出された人々が思い思いの方向へ散っていく午後2時。鈴木誠（すずき まこと）、42歳は、塾の窓から武蔵新城の日常をぼんやりと眺めていた...