Blog | 2026年7月16日
「電力は、庶民とハイパー企業の戦いになる」|AIがタダで使える時代はいつまで続くか
無料で使えているAIは、いつまで無料なのか。堀江貴文さんと深津貴之さんのセッションで語られた「電力の奪い合い」と、SpaceXが本気で申請した「宇宙データセンター」の話を、電気代を気にしながら暮らす私たちの目線で読み解きます。
連載「NEXT BUSINESS EXPO 2026 現地レポート」(全5回)
- AIにメールを書かせるだけではもったいない
- 「全社でやろう」と言った瞬間にAI導入は止まる
- 「電力は、庶民とハイパー企業の戦いになる」(この記事)
- 「うちにはデータがない」は勘違いです
- 補助金は「探す」ものから「届く」ものへ
2026年7月16日、東京・浜松町の東京都立産業貿易センターで開かれた「NEXT BUSINESS EXPO 2026」。堀江貴文さんと、noteや弁護士ドットコムのサービス設計に携わってきた深津貴之さん(株式会社THE GUILD代表取締役・横須賀市AI戦略アドバイザー)が、「エージェント時代、人間の仕事はどう再設計されるのか?」というテーマで語り合いました。かわさき楽AIサポートは、このセッションを現地で聞いてきました。この連載では、そこで語られた内容を、川崎で暮らす方・商売をされている方の目線に引き寄せて紹介します。
この日、いちばん背筋が寒くなった一言
それが「電力は、庶民とハイパー企業の戦いになる」でした。理屈はこうです。電気は無限ではなく、発電できる総量には上限があります。そこへ、AIを動かすために「いくらでも払うから電気を寄こせ」という資金力のある巨大企業が入ってくる。総量が決まっているところで取り合いになれば、勝つのは購買力の高い側です。残るのは、毎月の電気代を気にしながら暮らす私たち庶民。壇上で独占禁止法(大企業の力の乱用を防ぐ法律)が話題になったのも、根っこは「足りない資源を誰にどう配るか」というルールの問題だからです。
「核融合があるじゃないか」への答えは「10年以上かかる」
次世代の発電技術・核融合に期待する声には、即答で「10年以上かかる」と返ってきました。問題は、AIによる電力需要はすでに立ち上がっているのに、新しい供給は10年後にしか来ないこと。その間の10年をどう凌ぐかが現実の課題で、この文脈で出てきたのが「宇宙」でした。
「宇宙にデータセンター」は、SF雑談ではありませんでした
データセンターとは、AIやインターネットのサービスを動かす大量のコンピュータを収めた施設のことです。これを宇宙に置くという構想が、実際に規制当局へ申請されています。
- 2026年1月30日:SpaceX社がアメリカの通信規制当局FCCに、最大100万機の衛星による宇宙データセンター構想「Starmind」を申請。高度500〜2,000kmに配置し、太陽光で発電します。
- 2026年2月2日:イーロン・マスク氏が公式発表。同時にAI企業xAIの買収も発表し、ロケット・衛星通信・AIを一社で握る体制に。
- 2026年7月10日:第3世代Starlink衛星10万基の展開許可を申請(1機あたり毎秒1テラビット級の通信容量。最初の打ち上げは2026年後半目標。100万機のStarmindとは別案件)。
申請文書には「AIには、リアルタイムの意思決定や産業オートメーションを支える膨大な通信容量が必要であり、それがなければ米国は競争できない」と、通信容量は国家競争力だという主張が書かれています。
なぜ宇宙なのか——理由は二つとも物理的です
理由1は電気。宇宙の太陽光発電は天候に左右されず24時間発電でき、マスク氏の主張では地上の約5倍のエネルギー効率。地上の電力網から電気を奪いません。
理由2は熱。これが盲点でした。地上のデータセンターは、使う電力の約4割を機械の冷却に費やし、冷却水として年間数十億〜数百億リットル規模の水を消費します。宇宙の真空では、水を一切使わずに熱を宇宙空間へ逃がせます(放射冷却)。
つまり本質は「地上の物理的な限界から逃げている」ということです。
なぜ100万機も要るのか——威勢ではなく割り算です
地上の大規模データセンターは100MW(メガワット)以上の電力を消費します。一方、衛星1機の発電能力は数kW〜数十kW程度。初期のデータセンター衛星計画でも150kW級です。桁が4つ足りません。試算では、40MW級をつくるだけで約4万機が必要。100万機というのは、威勢のいい数字ではなく割り算の答えなのです。ちなみに現在のStarlinkは累計約1万1,000機超(2026年2月時点)。その約100倍という規模です。
もちろん留保もあります。宇宙ごみ(スペースデブリ)の増加や天体観測への影響には天文学者から強い懸念が出ており、国際的な軌道・周波数の調整も課題です。実現も段階的で、宇宙で発生したデータを宇宙で処理するのが2030年前後、地上のデータまで宇宙で処理する世界は2040年代以降のビジョン。明日の話ではありません。それでも「向こう10年、電気が足りない」という問題に対し、世界で最も資金と実行力のある会社が真顔で宇宙を選んだ——この事実は動きません。
日本の足元の数字
日本でも電力需要の急増は公式に想定されています。電力広域的運営推進機関(OCCTO・全国の電力の需給を調整する機関)の想定では、データセンター新増設に伴う最大需要電力は2025年度の47万kWから2034年度には616万kWへ、約13倍。使用電力量は30億kWhから440億kWhへ増えます。半導体工場の分(2034年度99万kW)を足すと合計715万kW。増加は北海道・東京・中国エリアに偏ります。
世界では、国際エネルギー機関(IEA)の試算で、データセンターの電力消費は2022年の約460TWhから2026年には約1,000TWhへ倍増見込み。これは日本一国の年間消費電力量に匹敵します。日本でも2026年4月施行の改正省エネ法で、データセンター事業者に電力使用効率(PUE)の報告・公表が義務づけられました。
では、電気代は爆上がりするのか
短期(〜2027年ごろ)については、データセンターが原因の大幅値上げは考えにくく、燃料費や為替の影響のほうがはるかに大きいというのが各種資料の見方です。米国では電気料金の高騰が報じられていますが、制度設計が違うため、日本で同じことが起きるとは限りません。
ただし、見えにくい経路で費用が回ってくる可能性はあります。
- 託送料金:送電網を増強する投資費用は、電気を使うみんなで分担する仕組みです。
- 容量拠出金:将来の発電能力を確保しておくための費用も、料金に転嫁されます。
- 卸市場価格:データセンターが集中する地域で電気が逼迫すれば、取引価格が上がります。
つまりデータセンターを一切使わない会社や家庭にも、間接的にコストが回ってくる構造です。中期的には2028年以降の託送料金・容量拠出金の改定が焦点ですが、どの資料も「いくら上がるか」を断定はしていません。
川崎の小さな会社・ご家庭にとっての意味
ここからが本題です。今、無料で使えているAIは、たまたま無料なのではありません。各社がシェアを取るために投資している、いわば「特売品」の時期だから無料なのです。しかし電気の総量は決まっていて、冷却の水にも限りがある。だからこそ宇宙への進出まで起きている。制約が本当に効き始めたとき、その値段は、誰かが払うことになります。
値段が上がってから始めると、学習コスト(覚える手間)と利用コストを同時に払うことになります。今始めれば、払うのは学習コストだけ。しかも練習台は特売中です。
今のうちにやっておくといい、3つのこと
1. 電気の請求書を読めるようにしておく
託送料金や賦課金がどこに載っているかを知っておきましょう。NotebookLMに契約書や料金明細を読み込ませ、Claudeを使ってGoogleスプレッドシートで直近12ヶ月の推移を、基本料金・電力量料金・燃料費調整・賦課金に分けて眺めるだけでも、変化に気づけるようになります。
2. 「これがないと回らない」業務を1つつくる
数字の突き合わせはスプレッドシート+Claude、規程や明細を読むのはNotebookLM、案内文はChatGPT/Claude、業界情報はGemini、チラシはNanobanana/ChatGPT。どれか1つ、業務に組み込んでしまうことです。
3. 学習を先に済ませる
道具の値段は変わるかもしれませんが、「使える人になっておく」ことの価値は下がりません。値上がりしたときに効くのは、「どこに使えば元が取れるか」を判断できる眼です。
かわさき楽AIサポートがやっていること
担当の内はIT業界26年、うち15年以上は金融システムのプロジェクトマネジメントをしてきました。その経験から言えるのは「制約は必ず後から来る。そして制約が来てからの対応は高くつく」ということです。私たちは川崎エリアの中小企業・個人事業主の方と、基本的に無料ツールだけで「一緒に覚える」方式の支援をしています。業務改善コンサルティングは成果報酬型(削減工数×3,000円/月・上限5万円、成果がなければ費用なし)。拠点は溝の口駅徒歩4分、川崎市内は訪問対応、初回相談は無料です。
ご相談でいちばん多いお返事は「そのうちやろうと思っている」です。この記事を最後まで読んでくださった方にだけ、正直にお伝えします。そのうちは、たぶん来ません。
この記事は、当社の公式note記事「「電力は、庶民とハイパー企業の戦いになる」」を、市民の方・AIになじみのない方にも読みやすいように書き直したものです。内容(数字・出典)は元記事と同じです。
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