Blog | 2026年7月16日
「うちにはデータがない」は勘違いです|衛星ビジネスに学ぶ、数字を「読める形」に変える方法
人工衛星の画像そのものは売れず、「あなたの畑の水分が下がっています」という一言なら売れる——。衛星ビジネスの意外な収益構造から見えてきた、あなたのお店にすでに眠っているデータの活かし方の話です。
連載「NEXT BUSINESS EXPO 2026 現地レポート」(全5回)
- AIにメールを書かせるだけではもったいない
- 「全社でやろう」と言った瞬間にAI導入は止まる
- 「電力は、庶民とハイパー企業の戦いになる」
- 「うちにはデータがない」は勘違いです(この記事)
- 補助金は「探す」ものから「届く」ものへ
2026年7月16日、東京・浜松町の東京都立産業貿易センターで開かれた「NEXT BUSINESS EXPO 2026」。堀江貴文さんと、noteや弁護士ドットコムのサービス設計に携わってきた深津貴之さん(株式会社THE GUILD代表取締役・横須賀市AI戦略アドバイザー)が、「エージェント時代、人間の仕事はどう再設計されるのか?」というテーマで語り合いました。かわさき楽AIサポートは、このセッションを現地で聞いてきました。この連載では、そこで語られた内容を、川崎で暮らす方・商売をされている方の目線に引き寄せて紹介します。
「衛星から地球をスキャンする業界が、儲かっている」
前回は「宇宙にデータセンターを置く」という電力側の話でした。壇上ではもうひとつ、人工衛星で地球を観測するビジネスが伸びているという話が出ました。最初は軽く聞き流していたのですが、帰って調べてみて、意外な事実に気づきました。儲かっているのは「撮る側」ではなかったのです。
鍵になる言葉が「ローデータ」。加工されていない生(なま)のままのデータのことです。結論を先に言うと——生のデータは、売れません。
数字で見る「撮る側」と「読む側」
公開されている市場調査によると、商用の地球観測衛星市場は2025年で約47億米ドル。2035年には114億ドルへ、年平均9.2%で成長すると予測されています(Global Market Insights)。調査会社によって定義と数字には幅があり、「衛星ベースの地球観測市場」を38〜43億ドル(2025年)とするものや、「衛星データサービス市場」を124.1億ドル(2025年)→150.3億ドル(2026年)・年率21.2%成長とするものもあります。上位5社(Maxar、Airbus、Planet Labs、中国の長光衛星技術、フィンランドのICEYE)で市場の50.2%を占めます(2025年)。
注目は中身です。2024年時点で、衛星「データサービス」(データを加工して提供する側)が28億ドル・市場シェア61.45%。さらに、生の画像ではなく解析済みの情報を売る「付加価値サービス」が年率9.87%で伸び、2030年までに市場全体の3分の1以上を占める見通し。小型衛星市場でも、地球観測分野は2026〜2031年に年率24.71%で成長し、その成長を牽引するのは「生のピクセルではなく、アラート(警報)を収益化する解析プラットフォーム」だとされています。
なぜ「読む側」が儲かるのか
撮る側は、衛星の開発とロケットの打ち上げに数百億円を投資し、衛星の寿命(約5年)のうちに回収しなければなりません。典型的な資本集約型(先にお金がかかる)ビジネスです。一方、読む側は衛星から届いた画像を解析し、「この畑の土壌の水分が下がっています」「この地盤が沈下しています」という意味のある情報にして届けます。お客さんとは定期契約になるので、収益が長く続きます。
代表例が米国のPlanet Labs社です。2026年に記録的な売上を達成し、初めて通年での黒字(非GAAPベース=一時的な会計要因を除いた実力ベースの黒字)になりました。「地球データのブルームバーグ(金融情報会社)」と呼ばれ、農家には毎日の灌漑(水やり)管理データを、保険会社には契約審査用の解析を売っています。売っているのは画像ではなく、解析結果です。
日本にも上場企業が3社あります。Synspective(証券コード290A・小型レーダー衛星「StriX」9機を運用中、2026年末に11機前後へ)、QPS研究所(464A)、アクセルスペース(402A・光学衛星を12機体制へ拡大予定)。そして大事なのは、衛星を持たなくても「読む側」としてこのビジネスに参入できるということです。
農家の例で分かる「加工の価値」
農家に解像度3メートルの衛星画像を毎日送りつけたら、どうなるでしょうか。困るだけです。見方が分からないからです。ところが「あなたの3番の畑、水分が下がっています。3日以内に水やりを」という一言にして届けば、お金を払う価値が生まれます。同じデータでも、加工の有無で価値は100倍以上違うのです。
「うちには、データなんてないですよ」
ここからが川崎の話です。私たちが中小企業の現場でいちばんよく聞く言葉が、これです。でも、たぶん勘違いです。あなたのお店や会社には、こんな「ローデータ」がすでにあります。
- レジの売上履歴
- 予約台帳
- 通帳の入出金
- 顧客名簿
- 現場の写真
- 日報
- LINEのやりとり
問題は「ないこと」ではなく、「生のままで、読める形になっていないこと」。衛星画像と同じです。
「数字を出す」と「アラートにする」は違います
ここで大事な区別をひとつ。
- 数字を出す(ローデータの言い換え):「先月の売上は、320万円でした」——ふーん、で終わります。
- アラートにする:「先月、A商品の粗利率が3ポイント落ちています。原価が上がったのに、値段を変えていないからです」——すぐ動けます。
同じデータです。違いは加工だけ。Planet Labsが画像ではなく「水分が下がっています」を売っているのと、まったく同じ構造です。
自分の会社で「読める形」をつくる5ステップ
ステップ1:棚卸し
どこにどんな生データがあるかを書き出します。まだ触りません。
ステップ2:1つ選ぶ
全部やろうとしないこと(前回の「飛び地戦略」と同じです)。いちばん困っているもの1つに絞ります。
ステップ3:数字にしてAIに読ませる
Googleスプレッドシートに入力し、Claudeに読ませます。コツは「合計を出して」ではなく「おかしいところを教えて」と頼むことです。
ステップ4:アラートの形を決める
「毎月これを見れば、まずい兆候に気づける」という1行を決めます。粗利率、リピート率、平均単価などが候補です。
ステップ5:月1回、同じ形式で続ける
アラートの価値は頻度と継続から生まれます。月1回、同じ形で出し続けます。
用途別の道具(基本無料)
| やりたいこと | 使う道具 |
|---|---|
| 数字の異常に気づく | Googleスプレッドシート+Claude |
| 契約書・規程・料金明細を読む | NotebookLM |
| 案内文・メール | ChatGPT/Claude |
| 業界情報・制度の動き | Gemini |
| チラシ・POP | Nanobanana/ChatGPT |
かわさき楽AIサポートがやっていること
担当の内はIT業界26年、うち15年以上は金融システムのプロジェクトマネジメント。いまは国土交通省が公開している地理空間データ(ハザード・地形・都市計画)を使って、不動産のリスクを点数で見える化する仕組みを試作しています。生のデータを「点数」に変える——Planet Labsと同じ構造だと、作りながら気づきました。
私たちは川崎エリアの中小企業・個人事業主の方の「ローデータを読める形にする」お手伝いをしています。基本的に無料ツールだけ、丸投げではなく「一緒に覚える」方式。業務改善コンサルティングは成果報酬型(削減工数×3,000円/月・上限5万円、成果がなければ費用なし)。拠点は溝の口駅徒歩4分、川崎市内は訪問対応、初回相談は無料です。
この記事は、当社の公式note記事「「うちにはデータがない」は勘違いです」を、市民の方・AIになじみのない方にも読みやすいように書き直したものです。内容(数字・出典)は元記事と同じです。
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