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「あの人が休むと店が回らない」飲食店へ|“頭の中の段取り”を1枚の手順書にする方法

仕込みも発注もあの人しか分からない。休まれると自分が入るしかなく、辞められたらと考えると夜も落ち着きません。これは信頼できる人がいる証拠であると同時に、店の弱点でもあります。

こんな状態、ありませんか?

仕込みの分量、業者への発注のタイミング、常連さんの好み。どれもベテランのAさんが覚えていて、聞けば必ず答えが返ってきます。助かっている一方で、Aさんが休む日は自分が朝から入って穴を埋めることになり、体調を崩されると数日ぶんの予定が崩れます。本人も「休みづらい」と感じているのが伝わってきます。手順書を作ればいいのは分かっていますが、Aさんも自分も店を回すので手いっぱいで、書き出す時間がまとまって取れません。

こう変わります

「Aさんしかできない」が「手順書を見れば二番手もできる」に変わります。全部を一度に移す必要はなく、休まれると特に困る仕事から2〜3個だけ手順書にするだけで、急な休みの日に店主が朝から入らずに済むようになります。ベテランの側も、聞かれるたびに手を止める回数が減り、休みを申し出やすくなります。手順書を作る時間は、本人に15分話してもらい、その録音をAIに渡して整えるまで含めて1本あたり30分ほどです。

やり方(スマホの音声メモ(またはボイスレコーダーアプリ)+無料AI(ChatGPT・Gemini・Claude))

  1. 「この人が休むと止まる仕事」を書き出して、上から3つだけ選びます。ここで全部を洗い出そうとすると、それだけで日が暮れて終わります。基準はシンプルで、「明日その人が急に休んだとき、自分が代わりに入らないと回らないか」だけです。仕込み、発注、締め作業、常連さんの対応あたりが挙がるはずです。3つに絞ったら、優先順位はつけずに、いちばん頻度が高いものから着手します。頻度が高い仕事ほど、手順書ができたときの効き目がすぐ出るからです。
  2. 本人に「教えてもらう」形で15分だけ話してもらい、録音します。書いてもらうのではなく、話してもらうのがポイントです。「明日から自分がこれをやるとしたら、朝から順に何をしますか」と聞き、口を挟まずに最後まで聞きます。詰まったら「そのとき何を見て決めていますか」「それをやらないとどうなりますか」の2つだけ質問を足してください。判断の理由はここでしか出てきません。録音はスマホの音声メモで十分です。終わったら、その文字起こし(iPhoneのボイスメモやスマホの音声入力でそのまま文字にできます)を無料AI(ChatGPT/Gemini/Claude)に貼り、次のように頼みます。「飲食店の仕込み作業の手順書を作ります。以下はベテランスタッフに口頭で説明してもらった内容の書き起こしです。初めてこの作業をする人が見て進められるよう、上から順の番号つきの手順にしてください。各手順には『何を見て判断するか』を一言添えてください。説明の中で前提になっているが書かれていないこと(分量の目安、道具の置き場所など)があれば、最後に『本人に確認したいこと』としてリストにしてください。」
  3. 二番手の人に一度やってもらい、詰まった箇所だけ書き足します。手順書は最初から完璧にはなりません。AIが出した「本人に確認したいこと」のリストを持って、実際に作業してもらうと、抜けが一度に見つかります。このとき、ベテランには横についてもらわず、質問が出たときだけ答えてもらう形にしてください。横にいると、結局その人が手を出してしまい、何が伝わっていないかが分からなくなります。出てきた質問をメモして手順書に追記すれば、2回目からは一人でできる状態になります。ここまでで1本完成です。次の仕事に移ります。

録音をAIに渡すときは、お客様の氏名や連絡先、スタッフの個人的な事情が入っていないか確認してください。常連さんの好みを手順に残す場合も、「カウンター奥の常連の方は氷なし」のように、個人が特定できない書き方で足ります。手順書は誰でも見られる場所に置くものなので、この段階で個人情報を落としておくと、あとで運用が楽になります。

数字でイメージ

たとえば、仕込みを一手に引き受けているベテランが1人いるお店を考えます。まず「明日休まれたら困る仕事」を挙げると、朝の仕込み、業者への発注、閉店後の在庫チェックの3つが出てきました。頻度がいちばん高い朝の仕込みから始めます。15分話してもらうと、「その日の予約数を見て、鶏は予約数プラス5人分」「魚は前日の残りを見てから決める」といった、これまで一度も言葉になっていなかった判断基準が出てきます。この録音をAIに渡すと、番号つきの手順と一緒に「鶏プラス5人分の根拠は?」「前日の残りは何を基準に多い少ないと判断しているか」という確認リストが返ってきます。それを持って本人に聞き、二番手が翌週に一度やってみる。詰まったのは道具の置き場所と業者の締め時間の2点だけで、それを書き足して完成しました。所要は聞き取り15分、AI整形5分、追記10分の合計30分です。

ありがちな失敗・注意点

  • 本人に「手順書を書いておいて」と頼むと、まず進みません。書くのは通常業務の外の仕事で、しかも当たり前すぎて何を書けばいいか分からないからです。話してもらって、こちらが形にしてください。
  • 3つより多く着手しないでください。全業務を手順化しようとした店は、たいてい2週間で止まります。休まれて困る仕事から順に、1本ずつ増やすのが結局いちばん早く終わります。
  • 「なぜそうするのか」を省いた手順書は使われません。分量や時間だけ書いてあっても、状況が少し変わると応用が効かず、結局その人に聞くことになります。判断の理由を一言でも残してください。
  • 二番手がやってみる工程を飛ばさないでください。書いた本人と店主が読んで「分かる」のは当然で、初めての人が詰まる箇所は実際にやってもらわないと出てきません。
  • ベテラン本人を「囲い込んでいる人」のように扱わないでください。多くの場合、本人は聞かれるたびに手を止めていて、いちばん負担を感じています。「あなたが休めるようにしたい」から入ると協力が得られます。

もう一歩:さらに深掘りするAIプロンプト

慣れてきたら、次のように聞くと一歩踏み込めます。

飲食店の作業手順書を作ります。以下は、その作業をいつも担当しているベテランスタッフに「明日から自分がやるとしたら朝から順に何をするか」を口頭で説明してもらった、書き起こしのテキストです。これをもとに、初めてこの作業をする人が見ながら進められる手順書にしてください。条件は次のとおりです。①上から順の番号つきにする ②各手順に「何を見て判断するか」を一言添える ③専門用語や店内だけで通じる言い方は、初めての人に分かる言葉に置き換える ④説明の中で前提になっているのに語られていないこと(分量の目安、道具の置き場所、業者の締め時間など)は、最後に「本人に確認したいこと」として箇条書きにする。手順は多くても15項目までにまとめてください。

まとめ

属人化は、その人が優秀だから起きます。責める話ではなく、頭の中にあるものを記録していないだけです。書かせるのではなく話してもらい、AIに形にしてもらい、二番手が一度やってみる。この順番なら、忙しい現場でも1本30分で手順書が増えていきます。

よくある質問

ベテラン本人が手順書づくりに乗り気ではありません。

「教えてください」から入るとうまくいきます。手順書を作ると言うと、自分の仕事を取られる、代わりを用意されると受け取られることがあるためです。実際の狙いは本人が休めるようにすることなので、そこを最初に伝えてください。15分話すだけで、書く作業はこちらでやると分かれば、断られることはあまりありません。

録音するのは大げさな気がします。メモではだめですか。

メモでも作れますが、判断の理由が落ちやすくなります。書き取ろうとすると手が追いつかず、要点だけ残して「なぜそうするか」が消えるからです。手順書で本当に価値があるのはその部分なので、録音をおすすめします。抵抗があれば、スマホの音声入力で本人の話をその場で文字にする形でも構いません。

手順書はどこに置けばいいですか。

スタッフ全員が毎日見る場所を1つ決めて、そこからたどれるようにしてください。すでに申し送りに使っているLINEグループや共有メモがあれば、そこにリンクやファイルを固定しておくのがいちばん確実です。紙をバックヤードに貼る方法も有効ですが、更新した紙と古い紙が混在しないよう、差し替えたら必ず古いほうを外してください。

全部の仕事を手順書にしないと意味がないのでは?

そんなことはありません。狙いは、急に休まれた日に店主が朝から入らずに済む状態を作ることなので、休まれて困る上位2〜3個が手順書になっていれば目的は達成できます。残りは、必要が出たときに1本ずつ足していけば十分です。全部やろうとして止まるより、3本できているほうが実際の助けになります。

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